研究概要 |
人体の体温をエネルギー源として動作することの可能な心臓ペースメーカーを開発することを目指し、体内における僅かな温度差を電気エネルギーに変換できる熱電素子の集合体を試作し、その評価を動物実験にて行った。 7.5mm(縦)x7.5mm(横)x1.6mm(厚さ)の熱電素子ユニット(シチズン社製)16個を電気的に直列に接続し、これを50mm(縦)x39mm(横)x2.6mm(厚さ)の板状の集合ユニットとした。この集合ユニットの発電特性をin vitroにて測定したところ、集合ユニット両面間の温度差1℃あたり、3.3Vの起電力が発生することを確認した。また、集合ユニットの内部抵抗は、約110kΩであった。 ジェネレーター(ペースメーカー本体)として、Pacesetter systems, Inc.社製Phoenixの電子回路部分を取り出したものを用いて動物実験に使用した、ジェネレーターの設定は、ペーシングレート72ppm、パルス幅0.75ms、ペーシング電圧5Vとして使用した。ネンブタール麻酔下の雑種成犬(10kg)の腹部を剃毛、皮膚に5cmの切開を加え、その皮下に試作した集合ユニットを埋め込み、ジェネレーターから取り出した電子回路を接続した。ペーシング電流に対する負荷として500Ωの抵抗を接続し、ジェネレーターの電子回路の作動状況をモニタすると共に、集合ユニット両表面、体内深部、および外気の温度を測定した。動物の皮下に埋め込まれた集合ユニットは、設定されたペーシング条件でジェネレーターを駆動することができ、その際の集合ユニットの表面温度差は1.5〜3.0℃であった。 動物の皮下に埋め込んだ熱電素子の集合ユニットによってペースメーカーを駆動できることが確認され.体温をエネルギー源としたペースメーカーの実現性が示唆された。
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