第2年度は初年度に得られた成果に基づき、以下のように検討を進めた。 i)ポリエチレングリコール(PEG)末端にアルデヒド、ポリ乳酸(PLA)末端にピレンを有するCHO-PEG/PLA-pyreneによるナノ診断への展開:前年度に合成したブロック共重合体を水中で自己組織化することにより、20〜40ナノメートルサイズのコア-シェル型ナノ粒子を形成させた。このポリマーの組成及び鎖長によってコア中に局在化したピレンのエキサイマー発光をすることを確認した。さらに表層にビオチンを導入したナノ粒子とアビジンを混合することにより起こる分子認識がピレンのエキサイマー発光に与える影響を調べ、新しいセンシング法として確立した。 ii)フラーレン含有ナノ粒子の抗酸化作用の評価:前年合成したCHO-PEG/ポリカチオンとフラーレンとの複合体の最適条件の設定を行うとともに、抗酸化能に関して電子スピン共鳴装置を用いて検討を行った。また、ガドリニウム内包フラーレンを新たに調製し、水の緩和時間に対する影響を検討した。本複合系を用いることにより、低pHでON、高pHでOFFとなる、新しいMRI用イメージング剤としてのナノ粒子を創出した。 iii)分散安定化リポソームの調製:R-PEG/オリゴカチオンのアミノ基の静電相互作用によって、カチオン系リポソームの表面処理を行い、リガンドを導入した機能性リポソームを調製した。本研究課題で調整したリポソームポリマー複合系はpHに応答して薬物リリース速度を変化するため、DDSキャリア基盤材料として期待される。
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