研究概要 |
平成15年度は,まずヨウ素造影剤のK吸収端を利用した単色X線撮影に用いるランタンLa標的を製作するために最適な材料を調べた.しかし加工が容易で安価,安全・安定なLa化合物を入手できなかった.そこで,ヨウ素に替えて,電子顕微鏡観察のための染色剤として広く用いられるルテニウムRuを造影剤に用いて実験を行った.RuのK吸収端エネルギーは22.12keVであり,この前後のエネルギーのK_αX線を発生できる金属標的として,パラジウムPd(21.18keV)とカドミウムCd(23.17keV)を用いた。アクリル製ブロックに開けた模擬血管に塩化ルテニウム溶液を注入して作成したファントムを被写体として,これらのX線で撮影を行ったところ,Cd標的の場合に高いコントラストが得られた.さらにCd標的による画像から,Pd標的の場合の画像を差し引いたところ,Ru造影剤のみの像を鮮明に抽出できた. 一方,造影剤を用いない場合への応用として,生物試料の骨格を高コントラストで撮影する実験を行った.骨に含まれるカルシウムCaのK吸収端(4.04keV)よりわずかに高いエネルギーのK_αX線を発生するチタン(Ti,4.51keV)標的を用いて小魚(Ammodytes personatus)を撮影した.励起用陽子ビームとして,焦点直径約10μmの2.6MeV陽子マイクロビームを用いた.比較のため銅Cu標的を用いて8.05keVのX線を発生し,同様の撮影を行った.その結果,Ti標的の場合に,より高いコントラストが得られた.またマイクロビームの利用により,市販の電子線マイクロフォーカスX線撮影装置に匹敵する画像分解能約20μmで骨格の細部を撮影する事に成功した.
|