研究概要 |
本研究者は,本研究開始前に,チューブ状のゴム成形品内部にパルス状に空気を送ることによりゴム弾性体の表面に進行弾性波を励起し,これと接する物体を駆動するアクチュエータの基礎動作原理「進行波駆動方式」を考案している.この方式は,柔軟で形状適応性のあるマイクロメカニズムの実現に適している.本研究では,この「進行波駆動方式」を適用することにより,内視鏡に自走機能を持たせ,曲がった管内に沿って内視鏡を誘導する機構の実現を目指した. 本研究は2年の研究期間で実施した. まず,初年度は「進行波駆動方式」を内視鏡誘導に適用する場合について,駆動周波数,弾性チューブの伸長率と自然長などの諸条件と速度との関連を調べ,最適条件を明らかにした.この結果に基づいて,大腸内視鏡外周に被せる8穴チューブのマイクロラバーチューブアクチュエータを試作し,動作試験を行い,内視鏡表面の摩擦低減に大きな効果を認めた. 今年度は,前年度開発したラバーチューブアクチュエータを用い,大腸内への挿入をターゲットにして,2種類の挿入実験を行った.まず,挿入に要する力を測定できる模擬内視鏡を試作し,これにマイクロラバーチューブアクチュエータを装着して単純な湾曲ビニルパイプへの挿入実験を行った,この結果,挿入力,挿入時間とも約半分に低減される大きな効果が認められた. 次に,実際の大腸内視鏡にラバーチューブアクチュエータを装着し,大腸ファントム(経験の少ない医師が挿入訓練をする大腸モデル)への挿入実験を行った.大腸内で前に進もうとする効果は確認できたが,挿入力低減等の客観的データは得られなかった.これは,医師の手技,大腸の形状等要因が複雑すぎて明白な効果を客観的に示すことができなかったためである.今後,医師との協力や,内視鏡の改造等も含めて研究を継続することにより,大きな効果が期待できる.
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