研究概要 |
関節は体幹構造を支える重要な組織であり,特に下肢の関節は体重の静的支持だけでなく歩行やジャンプ時には体重の数倍に及ぶ動的負荷を支える。関節は関節滑膜,関節液,脂肪組織,十字靭帯,関節軟骨,腱,筋肉など多様な複合組織から構成され,それらが協調的に動作してはじめて高度な安定性,運動性および柔軟性を兼ね備えた運動機能を発揮する。従来関節は不活発な組織であり血液供給や代謝活動は非常に少ないと誤解されてきたが,豊富な血管分布と神経支配を有し関節血管系は交感神経活動による動的な調節を受け関節血流量を変化させるという仮説を着想した。 1 平成15年度では動物(ラットやネコ)の膝関節に分布するマクロな血管網および交感神経を光学顕微鏡下に同定した。次に,関節組織血流量をレーザー血流計で記録しながら,腰部交感神経幹の電気刺激が関節組織血流量に及ぼす影響を調べた。交感神経の刺激は関節組織血流量を減少させ,この減少にはα受容体が関係していた。この所見は,交感神経が膝関節に分布する血管網を支配しており血管口径を動的に変化させることならびに交感神経活動が膝関節血流量を調節できることを示唆した。 2 またマイクロフォーカス軟X線を用いて麻酔ラットの膝関節に分布する微小血管動態を可視化できるような血管造影システムの開発を試みた。X線装置として広島大学自然科学支援開発センター動物実験施設に現有されているものを使用した。4μmという焦点源から放射されたX線を被写体に当てその2次元画像をイメージセンサーで記録しコンピュータで画像処理を試みた。しかし,空間分解能あるいは造影剤の濃度や流れについて問題点が発見されたので,現在のところ関節微小血管の造影には成功していない。引続き血管造影システムの開発を試みたい。
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