研究概要 |
関節は体幹構造を支える重要な組織であり,特に下肢の関節は体重の静的支持だけでなく歩行やジャンプ時には体重の数倍に及ぶ動的負荷を支える。関節は関節滑膜,関節液,脂肪組織,十字靭帯,関節軟骨,腱,筋肉など多様な複合組織から構成され,それらが協調的に動作してはじめて高度な安定性,運動性および柔軟性を兼ね備えた運動機能を発揮する。従来関節は不活発な組織であり血液供給や代謝活動は非常に少ないと誤解されてきたが,豊富な血管分布と神経支配を有し関節血管系は交感神経活動による動的な調節を受け関節血流量を変化させるという仮説を着想した。 1 昨年度に引き続き,膝関節に分布する微小血管を可視化するために,マイクロフォーカス軟X線血管造影システムの開発を試みた。X線装置として広島大学自然科学支援開発センター動物実験施設に現有されているものを使用した。4μmという点焦点から放射された軟X線を被写体に当てその2次元画像をイメージセンサーで記録し関節微小血管の静的画像の撮影に成功した。しかし,交感神経活動やホルモンが関節血管運動に及ぼす影響を調べるためには,造影剤の動きを動的に捕捉することが必須であるという問題が判明し,血管造影システムの一層改良は今後の重要課題である。 2 麻酔動物を用いて後肢骨格筋を静的あるいは動的に収縮させ,その際にみられる膝関節組織血流量をレーザー血流計で記録した。その結果,筋収縮は膝関節組織血流量を増加させることを明らかにした。また,この血流増加は収縮筋内に存在する筋受容器からの反射性調節で誘発されている可能性を明らかにした。昨年度の交感神経刺激による関節組織血流量の減少を考慮すると,膝関節に分布する交感神経活動は骨格筋受容器反射による抑制を受けることが考えられる。
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