研究概要 |
本年度は、動物下肢標本のIn vitro至適維持条件について以下の検討を行った。すなわち、摘出下肢標本をIn vitro環境で維持するため、灌流温度、灌流液組成、灌流方法を検討した。具体的には、ラットを用い、それらを幼若ラット群(9日齢)、若齢ラット群(16日齢)、成熟ラット群(生後3ヶ月以上)の3群に分けて検討を行った。各群ラットにおいて、エーテル吸入による麻酔導入後、ペントバルビタール(35mg/kg)腹腔内注射により麻酔維持を行った。次いで、開胸を行い、胸腔内から大動脈経由で人工的全身灌流を行えるようにした。この灌流システムにおいて、ラット脳幹・脊髄の神経機能を評価するため、自発呼吸活動をモニターした。標本を22℃〜36℃の様々な温度条件下で、至適灌流条件を検索した。灌流液を室内気平衡条件下と高酸素平衡条件下とした場合の標本生存性を比較検討した。若齢ラット群、成熟ラット群については、開腹下で下降大動脈内へカテーテルを挿入し、下半身のみの人工的灌流を行うとともに、その灌流条件についての検討も行った。これらの検討をした結果、幼若ラット群、若齢ラット群では、適当な条件下では60分間以上にわたって神経活動を維持・確認しえた。しかし、成熟ラット群では、長時間神経活動を維持することは困難であった。神経活動性の観点からは32℃〜34℃の灌流温度が、組織生存性の観点からは28℃〜32℃の灌流温度が適していると思われた。また、灌流液組成としては、ブドウ糖30mM,塩化ナトリウム126mM,塩化カリウム5mM、重炭酸ナトリウム26mM、硫酸マグネシウム2mM、塩化カルシウム2mM,燐酸二水素ナトリウム1mMとしそれを、それを酸素95%,二酸化炭素5%で平衡させた条件(pH=7.4)で、満足しうる標本維持結果を得ることができた。
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