研究概要 |
平成15年度は自閉症を含む発達性言語障害患者におけるFOXP2遺伝子の解析を行った。小児自閉症、その他の発達性言語障害例(非言語性IQが正常に近い症例)を臨床的に分類した上で、末梢血からゲノムDNAを抽出し、全エクソン領域(17エクソン)をPCR-SSCP法で解析し、変異の有無を検討した。これまでのところ、22例(小児自閉症9例、特異的言語障害例13例)の患者およびその家族の解析を行った。このうち家族歴を有するものは3例であった(兄弟2例、従兄弟1例)。解析の結果、エクソン5のポリグルタミンストレッチにおける3塩基(CAA)欠損と15エクソンのイントロン/エクソン境界部分における1塩基挿入がそれぞれ2例ずつ見つかった。既存のR553H変異(KE family : Lai CS, et al.Nature 413:519-523,2001)は検出されなかった。家族歴のある症例に変異は検出されなかった。FOXP2遺伝子のエクソン5および6にはポリグルタミンストレッチ、エクソン12〜14にはフォークヘッドDNA結合ドメインがあり、今回発見された変異はこれらの領域内や近傍に存在するため、FOXP2遺伝子の機能に影響をきたす可能性が高いと思われる。変異のみつかった症例に関しては、今後、家族および正常対照を増やして比較し、遺伝子変異が疾患と関連するものか否かを検討する。また、同じ変異を有する2例ずつについて、臨床病型の相違を種々の発達検査や言語評価を行い詳しく検討する必要がある。
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