男性の20人にひとり(5%)、女性の500人にひとり(0.2%)の割合で色覚異常が存在する。欧米ではこの割合が8%を超えるとされる。色覚異常者は従来型の電球式交通信号では明るさの差(黄>赤)をヒントに識別できており、安全上ではほとんど問題視されていなかったが、西日擬似点灯対策、寿命、エネルギー消費の観点等から優れる新型のLED信号灯器の出現・普及に上り、色覚異常者(第1・第2)にはかえって黄と赤の灯器の区別がつかなくなったと指摘されている。 このため警察庁は現行モデルにおいて黄色LED信号灯機の明るさを50%高めたものの、本質的な解決にはいたっておらずLED式交通信号灯の決定的な対応策がないまま全国に普及している。 本研究はLEDの利点をそのまま継承しつつ、健常者と色覚異常者の双方にとって識別可能となるユニバーサルデザイン方式を確立することを目的とした。仮説として石原色覚検査表の原理を逆転発想で活用し「色覚異常者には読めるが、健常者には読み難いピクトグラフ」付信号灯器の開発を目標とした。このため色覚異常者(第1・2)が相対的に敏感な短波長域の色で禁止を示すピクトグラフを赤色灯に組込むことを考案した。 研究方法としては、1)CGシミュレーションによる色覚異常の視認評価、2)LEDの配列パターンと配色を変えた実験用信号案の作成、3)LED実験機を撮影し色覚異常のシミュレーション評価、4)色覚異常者と健常者による視認距離実験によるデータの収集・分析の4段階である。 健常者には色相明度彩度ともに近似して見えるトーンイントーン配色が色覚異常者には補色的なアクセントカラー配色に見えるため、よりくっきりとピクトグラフを認識できることが判明した。また実験によるデータからは色覚異常者と健常者の間には、顕著な統計的有意差が認められ、実用化に際してのXY色度、LED配列デザイン、色覚異常者への交差点における視認効果等が明らかになった。
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