研究課題/領域番号 |
15650130
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
宮内 卓 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (60222329)
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研究分担者 |
前田 清司 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 講師 (30282346)
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キーワード | スポーツ心臓 / 生理的肥大心 / 病的肥大心 / 心臓・血管調節性因子 / mRNA / 運動トレーニング / 高血圧 |
研究概要 |
本研究プロジェクトは、心臓の特性が異なる生理的肥大心と病的肥大心の成立機序の違いを分子レベルで解明することを目指している。今年度は、心臓・血管調節性因子に着目して、病的肥大心とスポーツ心臓における分子レベルでの比較検討を行った。 高血圧で生じる圧負荷肥大心(病的心肥大)と長期の運動トレーニングで生じる肥大心(スポーツ心臓すなわち生理的肥大心)では心臓の種々の特性が異なる。今回、これらの成因の異なる肥大心にて、種々の心臓・血管調節性因子の遺伝子発現を検討した。病的肥大心モデルとして19週齢の自然発症高血圧ラット(SHR)、生理的肥大心モデルとして15週間の永泳トレーニングを行ったWKYラット(運動群)を用い、心肥大作用に関連する種々の心臓・血管調節性因子のmRNA発現を検討した。安静飼育したWKYラットを対照群とした。SHRおよび運動群は共に左室肥大を引き起こした。SHRの肥大心におけるBNP、ACE、エンドセリン-1のmRNA発現は対照群より有意に増大していたが、運動群の肥大心では、対照群と差が無かった。β1-adrenergic receptor (β1AR) mRNAの発現は、SHRおよび運動群で対照群より有意に増加していたが、β1ARからの情報伝達を抑制するβ1AR kinaseのmRNAは、SHRで運動群および対照群より有意に亢進していた。また、心臓にて肥大抑制作用を有するアドレノメデュリンのmRNA発現は、水泳群でSHRおよび対照群より有意に低下していた。これらの結果より、高血圧による病的肥大心と生理的肥大心では、心臓・血管調節性因子の遺伝子発現様式が異なることが示された。すなわち、肥大心における心臓・血管調節性因子は、肥大の成因によって異なった変化をすることが示唆された。
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