研究概要 |
陸上競技選手を対象に、走行速度に増加に伴う大腿部単関節筋および二関節筋の筋活動の変化を比較・検討した。ランニングは、トレッドミルの角度0度、走行速度毎分150、200、250、300および350mにより行った.このとき、表面電極法を用いて、筋電図を左側の外側広筋、大腿直筋および大腿二頭筋長頭より時定数0.03秒にて導出し、データレコーダに収録し、その後、波形解析装置に導いて分析した。被験者(n=24)のピッチおよびストライドは、走速度の増加とともにそれぞれ正および負の放物線的増加を示した。毎秒あたりの筋放電量(μVsec/sec)は、単関節筋(外側広筋)および二関節筋(大腿直筋、大腿二頭筋長頭)の両者とも、走速度の増加とともに曲線的な増加を示したが(P<0.01)、大腿二頭筋長頭における300m/分以降の放電量の増加は急峻であった。一方、1ストライドあたりの筋放電量(μVsec/ストライド)は、単関節筋では走速度とともにほぼ直線的に増加したのに対し、二関節筋では曲線的な増加を示した。また、単位距離あたりの筋放電量(μVsec/m)は、外側広筋および大腿二頭筋長頭では、走速度250m/分までは速度の増加とともに有意に低下したが(P<0.01)、それ以降はほぼ同様な値を示した。これに対し、大腿直筋の放電量は走速度250m/分までは変化が認められなかったが、それ以降は速度の増加とともに指数関数的な増加を示した(P<0.01)。しかし、大腿直筋の放電量(μVsec/m)と速い走速度(300および350m/分)におけるストライドとの間には、有意な負の相関関係が見られた(それぞれr=-0.47、P<0.05およびr=-0.61,P<0.01)。これらの事実は、ランニングにおけるストライドの大小は大腿直筋の抑制の程度と関与している、ことを示唆するものと考えられた。
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