1.目的 自転車競技の能力や技量を効率的に向上させるには、トレーニング方法の理論的な研究・開発が必要と考え、どの様な形のトレーニングが競技能力の向上に関与するかを解明することが本研究の目的である。 本年度はシミュレーター走行による計測を行い、自転車走行能力の差によって、動作・筋電位など自転車運動能力のどのファクターに違いがあるかを検討した。 2.対象・方法 競技能力に差をもうけた日本競輪学校生徒(5名)を対象とし、一般成人男性(4名)を対照とした。直結式自転車台上走行試験装置(シミュレーター)において体重相当分の負荷をかけ、周回レベルからダッシュ走行(目標速度60km/h)を行った。シミュレーターからは、後車輪速度・回転数・クランク回転数・角度・トルクを記録した。足趾、足関節、膝関節、股関節、上前腸骨棘、肩関節の6点にマーカーを貼付し、デジタルビデオカメラ画像から走行フォームを記録し、各関節の運動を計測した。さらに、大腿四頭筋、大腿二頭筋、前脛骨筋、腓腹筋上の表面筋電図(SEMG)を連続的に計測した。 3.結果・考察 ・シミュレーターでの走行能力と膝周囲筋力との間に相関があった。 ・画像解析から選手生徒は対照群に比べ膝より上位の関節の動域角度が大きいが、足関節の動きが少なく、脚全体でこいでいると考えた。 ・マーカーの軌跡からフォームを観察すると、競技能力が優れた生徒ではダッシュ時前方への移行はスムーズで、無駄な動きが少なかった。 ・SEMGから、走行能力の優れた生徒はダッシュ時の筋活動の維持時間が長かった。またクランク角度・各関節角度 ・下肢動作および各筋活動の総合的な解析から、ペダルの引き上げが重視されていると考えた。 これらのことから、動作およびSEMG解析は、自転車走行能力を評価する手段として有用であることが解り、この解析手法のさらなる確立が客観的な自転車走行能力の解明に貢献すると考えた。
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