研究概要 |
近年、小山裕史氏は筋力トレーニングで「初動負荷」の概念を提唱し、その理論に基き多くの国内外のスポーツ選手を指導され、パーフォーマンスの向上に寄与している。しかしながら、本動作における科学的な研究は運動生理学的側面からの報告が僅かにあるだけで、バイオメカニクスと運動制御に関する報告はまだない。そこで本年度は、小山氏が開発したトレーニングマシンを使って初動負荷理論に基づいた動作を行ったときの特徴を明らかにするために、被験者が椅子に腰掛けてラットプルダウン動作を初動負荷理論にしたがって行ったときの動態を従来のトレーニング動作と比べた。測定項目はシャフトの上下移動、シャフトに掛かるフォース、パワー、肩関節と肘関節の角度、および広背筋と上腕二頭筋のEMG活動とし、解析した。その結果、初動負荷動作は従来のトレーニング動作と比べ、シャフトが上昇し最上点に達したところから下方へ動作が切り換わるときに発揮されるフォースが大きく、さらに、動作が切り換わる時点からシャフトの最大速度、最大フォース、および最大パワーが出るまでの時間が短かった。シャフト上方時の肩関節外転が肘関節伸展に先行した。このとき、広背筋は上腕二頭筋に比べ活動の開始が先行し、長く、大きく、活動した。 以上、初動負荷トレーニングにおける動作は、動作の切り換えしが素早く、短時間で最大パワーの発揮ができることが明らかとなった。またキネマティクスと筋活動からは体幹から遠位へと力を伝えるような制御機構がとられていることが示唆された。 これらの結果を本年度の第58回日本体力医学会大会にて以下の演題で報告した。 1)初動負荷動作のパワー発揮特性:吉田雅司、藤森健、小山裕史、鈴木秀次 体力科学Vol52:p748,2003 2)初動負荷動作のパワー発揮とその神経筋制御:藤森健、吉田雅司、小山裕史、鈴木秀次 体力科学Vol52:p749,2003
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