本研究は繊維の吸着能を利用して、繊維状物質について水中の汚染物質を除去する材料としての有効利用を目指す。これまでの研究で、各種繊維素材は分子構造の違いにより、気体状の有機化合物を選択的に吸着する傾向のあることを見出してきた。しかし、水中に存在する有機化合物の吸着は、気体の吸着と同様に考えることはできないと考えられた。そこで、各種繊維に対する水中の有機化合物の吸着の可能性あるいは特性について、先ず、基本的なデータ収集を計画した。 先ず、吸着材料として、天然繊維から、絹、セルロース繊維(木綿、レーヨン)を選んだ。また、合成タンパク質モデルとして、ポリアラニン、ポリバリン、ポリロイシンなどのポリペプチド(いずれも、アミノ酸はL体)を合成したものを用いた(これらは粉末状である)。一方、汚染物質を含む水のモデルとして、各種アルコールを1-8%(体積)程度含む水溶液を調整した。先ず、簡単に吸着傾向を見る実験を行った。方法は、繊維素材を、2mm以下の長さに切り、均一になるように工夫しながら、ガラス管に詰めた(これを充填カラムとする)。次に、このカラムの上部からアルコール水溶液を流し、下部の流出液を、所定時間毎に採取したもの(フラクション)について、ガスクロマトグラフィー(GC)で分析した。 以上の結果から、絹およびセルロース繊維はアルコール類をよく吸着することがわかった。また、吸着量は、アルコール分子の疎水性基のサイズに依存することがわかった。すなわち、疎水性基の大きなプロパノールは、それより小さいメタノールに比べると、より疎水性の高いアミノ酸残基を多く含むポリペプチド材料に吸着する傾向が見られた。さらに、その他の化学繊維、合成タンパク質に対する他の有機化合物についても、系統的に検討中であり、次年度以降に発展させる
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