本プロジェクトは、医・工学系ではなく生活科学系から、製品開発の新しいコンセプトの提供とその可能性を示しうるデータの収集を第一の目的とする。入眠に焦点をおき、入眠時の生理学的および物理学的パラメータから、入眠を促進するパラメータを評価し、どうすれば入眠を促進することができるのか、そこに新しい製品開発コンセプトを見出すことを試みる。昨今見直されてきつつある湯たんぽは、足踵を効果的に暖めるため、これに注目して入眠を促進する製品の開発に役立てることを目的とした。 昨年度行った予備実験として行った昼寝実験より求めた、実際的な快適な足部加温条件をもとにして、終夜睡眠実験をおこなった。 健康な青年女子(大学生)6名を被験者として採用して、冬期の寝具・寝衣条件で、冬期の室内環境として、入床前安静時18℃、入床前60分より起床時まで15℃50%で夜間の睡眠実験を行った。寝床内暖房条件として、条件1:加温なし、条件2:湯たんぽ湯温55℃、条件3:電気あんか低温で終夜使用、条件4:電気あんか高温で足底皮膚温が30℃になるまで使用の4条件とした。睡眠時には、脳波、心拍数、体動量、直腸温、皮膚温などを測定し、入床前後には心理申告を求めた。 その結果、(1)足底部加温器具による加温は、足部皮膚温が速やかに上昇し、直腸温の低下を促し、入眠促進効果があることが示唆された。(2)足部が適切に加温器具接触してない場合は足部皮膚温の上昇が速やかではなかったが、入眠時に高めの温度設定条件であった条件2、4においては、比較的安定した入眠促進効果がみられた。その後の温度低下の影響はほとんどみられなかった。(3)足部加温器の使用では、寝床内温度が既往の報告にある快適温度範囲に達する前に置いても速やかな入眠効果がみられた。
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