研究課題
ラットにゴマおよびゴマリグナンを摂取させた場合、体内のトコフェロール(Toc)濃度が著しく上昇することを見出している。最近ヒトにおけるビタミンEの主要な代謝経路は側鎖が3炭素となったカルボキシエチルヒドロキシクロマン(CEHC)への分解で、CEHCは主に尿中へ排泄されることが報告されている。Parkerらは主要なゴマリクナンであるセサミンがこの代謝経路を阻害することを培養細胞を用いた実験で示した。申請者らはラットの実験でゴマやセサミン投与で生体内ビタミンE濃度の上昇と尿中へのCEHC排泄の抑制を認め報告した。今回、ヒトにセサミンを投与するとビタミンEが上昇し、尿中CEHCが減少するかを検討した。被験者は、22歳から23歳までの健常な女性16人を選別した。本研究の主旨を理解し、実験協力を得た。投与直前に採血を行い、その後セサミン100mgをカプセルとして単回投与し、投与後1、3、6および24時間に採血を行った。投与3日前から投与24時間後まで同一食事を摂るよう指示し、投与前後24時間の尿を採取した。血清のToc濃度、尿中のCEHC量を測定した。その結果、血清α-Toc濃度はセサミン投与後1時間で上昇傾向を示し、γ-Toc濃度は投与後6時間で有意に上昇した。Toc濃度は24時間後で投与前程度に戻り、Tocを保持し続ける為にはセサミンカプセルの継続摂取が望まれた。また、投与前の尿中CEHC量は、α-CEHCに比べγ-CEHCが約3倍多く排泄されており、γ-Tocは体内に保持されにくく、すばやくCEHCに代謝されていることが確認された。投与前後でα-CEHC量は変化しなかったのに対し、γ-CEHC量は減少傾向が見られた。以上の結果から、α-Tocとγ-Tocの体内動態に対するセサミンの影響が異なり、セサミン投与は体内に保持しにくいγ-Toc濃度を高めるのに有効である可能性が示された。
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