小麦粉伝統発酵食品中の微生物の働きについて、微生物の普遍的な存在を明らかにし、分離した微生物の産生する酵素作用についての探索を続けており、これまでに1995年にモンゴルにて採取した伝統発酵食品から分離した微生物に有用性を見出している。 平成15年度は、上記有用微生物の故郷であり、急速に近代化が進んでいると言われるモンゴル国を訪れ、伝統発酵食品における現地調査を行った。近代化が進むにつれ、生産力と効率が重視され、伝統的な製法は時代とともに失われていくことが危惧される。モンゴル国・首都ウランバートルでは、近隣国の韓国やロシアからの輸入食品も多く、近代的な生活環境が整っていた。しかし、郊外の移動式住居(ゲル)に住む遊牧民においては、今なお伝統的な生活様式が継承されており、遊牧民による多種類の乳発酵食品等が手作りされていた。また、小麦粉発酵食品のパンについての調査結果より、数種類のパンでは、酵母および酵母以外の微生物の存在も確認され、興味深い結果を得ることができた。 一方、現在食物アレルギーは社会的な問題になっており、特に小麦アレルギーは急増している。主食となる穀類においてアレルギーがあることは、深刻な問題である。これまでに伝統発酵食品より分離した微生物(Bacillus属)の産生する酵素の特徴のひとつに、低アレルゲン化に利用されているコラゲナーゼ様酵素活性がみられるものがある。それらの微生物の産生する酵素と酵母とを用いたパンを試作し、材料配合および低アレルゲン化パン作成の可能性を検討している。
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