小麦粉伝統発酵食品中の微生物の働きについて、微生物の普遍的な存在を明らかにし、分離した微生物の産生する酵素作用についての探索を続けており、これまでに1955年にモンゴルにて採取した小麦粉伝統発酵食品から分離した微生物において低アレルゲン化に利用されているコラゲナーゼ様酵素活性が見られるものがあることを見出している。 平成15年度には、上記有用微生物の故郷であり、急速に近代化が進んでいると言われるモンゴル国を訪れ、伝統は発酵食品における現地調査を行った。近代化が進むについて、生産力と効率が重視され、伝統的な製法は時代と共に失われて行くことが危惧される。モンゴル国・首都ウランバートルでは、近隣国の韓国やロシアからの輸入食品も多く、近代的な生活環境が整っていた。しかし、郊外の移動式住居(ゲル)に済む遊牧民においては今なお伝統的な生活様式が継承されており、多種類の乳発酵食品が手作りされていた。また、小麦粉発酵食品の1つであるパンを調査した結果では、数種類のパンにおいて酵母および酵母以外の微生物の存在も確認することができた。 平成16年度には、パン作成に使用する小麦粉について、地産地消の動きの中、国内産小麦粉、特に岐阜県内産小麦粉を使用したパン作成を検討した。この中で製パン性の高かった岐阜県内産小麦粉・中国152号について外国産小麦粉との配合割合を変化させパン作成を行った。また岐阜県の推奨品種である「タマイズミ」においても製パン性についての検討を継続している。また、中国のタデ科植物を利用した小麦粉伝統発酵食品中から分離した微生物から小麦たんぱく質のアレルゲンたんぱく質を分解する菌株が見られた。 食物アレルギーは社会的な問題になっており、特に小麦アレルギーは急増している。主食となる穀類にアレルギーがあることは深刻な問題である。これまでに、伝統発酵食品から分離した微生物から産生する酵素の特徴のひとつに低アレルゲン化に利用されているコラゲナーゼ様酵素活性が見られるので、酵母と岐阜県内産小麦粉に上述の微生物の産生する酵素を添加し、さらに低アレルゲンパンの可能性を検討していきたい。
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