本研究の目的は、数学史における擬変数の機能とその数学教育学的価値に着目して規範的に教材を開発し、インタビュー調査および授業実践を通して「数字の式」の学習指導における擬変数の価値を実証的に示すことである。本年度の研究実績は、以下の1)〜3)に整理できる。 1)昨年と同様、「数字の式」が一般性を志向した思考の道具として利用できることを明示的に示す教材を開発した。具体的には、次の3文脈において教授課題を開発した。 [1]数のパターンの発見とその一般的説明の文脈 十進位取り記数法の特徴を背後に踏まえた数当てパズル [2]関数の性質を表から読み取り式化する文脈 図的表記に関連付けて和一定、差が一定の式をよむ教授課題を開発した。 [3]図形を対象にした問題解決において、「数字の式」を活用する文脈 昨年と同様、積が一定となる幾何学的事象に関連する教授課題を別の文脈で開発した。 2)昨年と同様、開発した教材を授業において実践できるように検討した。 3)開発した教材に関してインタビュー調査・実験授業を行った。 特に、[1 十進位取り記数法の特徴を背後に踏まえた数当てパズルについて、小学校2年生から5年生を対象にインタビュー調査を実施した。特に、2年生を対象にしたインタビューでは、擬変数の特徴が顕在化され、擬変数の機能を感得する授業実践への一布石を築くことができた。
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