本研究の目的は、ネットワーク上の科学的探求コミュニティ形成・維持を支援するための方式を提案し、その方式を実装したシステムを開発、評価することである。 本年度の実績は以下のとおりである (1)予備調査 CSCL関連の文献調査をおこない、協同学習支援システムにおけるコミュニケーション支援機能の実現方法ついてレビューした。この調査により、電子コミュニティの活動支援の道具として電子掲示板型のシステムが多用されていることが確認された。同時に、電子掲示板への書き込みをエンカレッジするような援助については研究の余地があることがわかった。 (2)システム試作 予備調査の結果に基づいて、電子掲示板上の情報交換や議論に参加する際の心理的負荷、社会的負荷を取り除く手法について検討し、質問バケツリレー方式を組み込んだ電子掲示版システムを試作した。このシステムは、ある書き込みが掲示版上になされた時に、システムが一人の参加者をランダムに選び、その書き込みへの反応候補者としてコミュニティメンバーに公示するような仕組みと、反応候補者になった参加者がその反応候補者の権利を知っている人にパスしたり、システムに返納したりできる仕組みを備えている。これらの仕組みは、人が電子掲示板上の書き込みに対して返答を返すことを決定する際に暗黙におこなっている「返答正統性の確信化」を情報技術を利用して後押しするものであり、この方式によって電子掲示板上のコミュニティ活動が支援されると考えられる。
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