研究概要 |
Native Speaker of Englishは非強勢音節部分を音節中の非強勢母音の数が少ない時は長く、多くなると短くし自在に発話出来るが、日本人学習者では非強勢音節部分の発話能力が不十分である。共同研究者の中野は、GrahamのJazz Chants for Children (JC;1997)を基に作成した教材が、日本人学習者の英語リズム習得に効果がある事を示した。リズム学習は脳内での変化を伴うと考えられるが、どこでどのように変化するか現在の所、不明である。また前頭部における脳波θ波(Fmθ)は、ある種の記憶学習タイプに関係していると考えられている。そこで本研究ではJCを用いたリズム学習時におけるFmθの変化を測定しリズム学習時におけるFmθの関与を調べた。 実際には日本人男性5人の被験者に対しJCによる学習を5日間行い、学習中における前頭部脳波を測定した。得られた脳波から、時系列解析ソフトMemCalc(諏訪トラスト社製)を用い、θ(4-8Hz),α(8-13Hz),β(13-30Hz)の各周波数帯域パワーの経時変化を測定した。被験者の英語リズム習得度はJC前後において、テスト文中2強勢間継続時間(ISI)の変化により評価した。その結果、JC後の方が2強勢間非ストレス子音の数に関わらず、ISIは約100ミリ秒ほど短くなった。JCによる5日間の学習中、α,β波に比べ、Fmθの増加の割合は最も大きかった。4人の被験者において、学習開始4日目まで徐々に上昇し最大ピークを迎え5日目に減少した。同様の傾向はα,β波では観察されなかった。以上の結果より、Fmθは、JCによる日本人の英語リズム学習時の脳内変化と関わっているのではないかと考えられる。さらに、JCの効果は、学習後1ヶ月は効果が保持される事を明らかにした。今後は正中前頭部以外の場所における脳波について詳細に解析を行い、JCによる英語リズム学習中の脳全体における変化を明らかにする予定である。
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