当研究の目的は、ベルギー・ゲールにおける精神科家庭看護の実践が19〜20世紀の精神医療に及ぼした国際的な影響を、当地の精神病院に残されている見学者名簿(1892〜1936年)の分析を通して明らかにすることである。名簿にみる外国人訪問者489人うち、独・仏・英・米の4カ国からの見学者が特に多い。平成15年度は2回にわたる国外研究で、おもにドイツからの見学者の調査を行った。とくにGeel見学者を多く出しているプロイセン(ザクセン州およびブランデンブルク州)およびバイエルンの動向に着目し、まず9月にはDeutsche Bucherei(ライプチヒ)、Stadt- und Landesbibliothek、Brandenburgisches Landeshauptarchiv、Universitat Potsdam(以上、ポツダム)、Staatsbibliothek(ベルリン)を訪れ、さらに1月には再びBrandenburgisches Landeshauptarchiv(ポツダム)およびUniversitatsbibliothek der Humboldt-Universitat、Stadtbibliothek(以上、ベルリン)、Bayerisches Hauptstaatsarchiv、 Staatsarchiv Munchen(以上、ミュンヘン)などを訪れ、当時の各地方レベルでの精神医療政策に的を絞って資料の閲覧と収集に努めた。その結果、1900年前後におけるドイツ各地の精神医療改革の延長上にGeel見学があり、見学者はその中心的な役割を担った人々であることを明らかにした。他方、国外調査と平行して、インターネットでの検索・電子メールでの問い合わせによる見学者情報の収集、国内外の図書館を通じての調査を通して、見学者のbiographyや関係基礎データを蓄積した。
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