研究概要 |
海水中に存在する溶存有機物は、地球表層の最大有機炭素プールである。限外濾過法を用いた最近の研究から、溶存有機物の70%以上が分子量1,000以下に存在することがわかった。分子量1,000以上の有機物については、限外濾過法により濃縮・脱塩が可能なため化学的研究が活発に行われているが、化合物レベルでの情報は少ない。また、分子量1,000以下の有機物の化学的研究例はほとんど無い。本研究は、世界で初めて海水中よりペプチドの検出を試みる。そして、ペプチドが検出されれば、その化学的実体を明らかにすることで、溶存有機物の大半を占める分子量1,000以下の有機物の起源や動態を明らかにし、ひいては地球表層の物質循環に果たす溶存有機物プールの役割解明に資する事を目的とする。 本年度は、溶存有機物中のペプチドの検出実験および平成16年11月から17年3月に東京大学海洋研究所所属白鳳丸による南西太平洋を対象海域とした研究航海に参加し、沿岸域および外洋域での溶存有機物中のアミノ酸の分子量分布に関する水平・鉛直分布を完成させるための試料採取を行った。 海水を分子量分画し、0.1μm〜分子量3,000および分子量3,000以下の溶存有機物試料を得た。また、 活性炭吸着カラムを用いて、を用いて、分子量3,000以下画分からのオリゴペプチドの捕集も試みた。分子量3,000以下の画分のオリゴペプチドは、海水中で単独もしくは他の溶存有機物成分と相互作用して存在していると考えられる。0.1μm〜分子量3,000および分子量3,000以下の画分について、前処理しないまま、オリゴペプチドが捕集されれば、海水中で単独で存在していると考えられる。現在これらの画分のアミノ酸量を定量して比較している最中である。オリゴペプチドが相互作用している場合は、脱脂、ペプチド結合以外の結合の部分開裂、等の化学処理後オリゴペプチドを再捕集する。
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