【目的】近年遺伝子組換え作物の総作付け面積および流通量は増加の一途をたどり、今日我国においても同作物の"意図せざる混入"を阻止することは不可能になったとされている。しかしその実態を詳細に調査した報告例は意外に少なく、逐次変化している現状を的確に把握するという意味からも、即時的なデータの蓄積が必要と考える。そこで本研究では市販のダイズ加工品を対象に遺伝子組換えダイズ混入の実態調査を行ったので報告する。 【方法】埼玉県内のスーパーマーケットで購入したダイズ製品35品目を対象にJAS分析試験ハンドブック遺伝子組換え食品検査・分析マニュアルに従って各ダイズ製品からDNAを抽出後、定性的および定量的PCR法によりモンサント社製除草剤耐性ダイズの特異的領域RRS(121bp)の増幅を行った。同時に内部標準としてダイズ内在性レクチン遺伝子Le1(118bp)の増幅も行い、陽性対照としてはGMダイズ陽性コントロールプラスミド(ニッポンジーン)を用いた。なお定量検査においても一定の定量性を確保するため、鋳型DNA量を100ng/100μlに固定し、特異的領域のアガロースゲル電気泳動におけるシグナル強度が内部標準のシグナル強度と同等以上の場合に+++、内部標準のシグナル強度の1/2以上1未満の場合は++、1/2未満の場合は+と判定した。 【結果】供試35品目の82.9%にあたる29品目が有効検査品目であった。このうち26品目から組換え遺伝子が検出され、検出率は89.7%にのぼった。さらに陽性26品日中76.9%にあたる20品目が「遺伝子組換えでない」と表記してあり、「有機」と表記してある1品目からも組換え遺伝子が検出された。次に定性検査において+++と判定された水煮ダイズ製品1品目およびきな粉製品1品目と「有機」と表記されながら++と判定された乾燥ダイズ製品1品目の計3品目を対象に定性検査を行った結果、水煮ダイズ製品およびきな粉製品の組換え遺伝子含有率は0.1%、乾燥ダイズ製品では0.05%であった。以上の結果より、流通過程に遺伝子組換え作物が薄く、広く浸透しつつある実態が明かとなった。
|