研究概要 |
本年度は、平成15年度に行ったアンケート調査結果を元に統計モデルの構築を行い、総括を行った。研究対象とした公共事業は沖縄県沖縄市中城湾に位置する泡瀬地区埋立事業である。埋立面積185ha、総事業費655億円の大規模プロジェクトであるが、採算面での問題点も指摘されており、また豊かな自然環境が破壊されるのは認められないとして、事業の中止を求める住民の声が高まっている。 公共事業を円滑に推進するための住民と行政とのコミュニケーション(パブリック・コミュニケーション)では、計画評価を歪めている誤った計画認識が解消されるべきであるとの見地から、それらを特定するために、住民が各個人の計画認識に基づいて計画を評価するパラメトリックなモデルを構築した。パラメトリックなモデルで個人の評価構造を表現する際、パラメータの値は各個人で共通していなければならない。しかし、自然環境を大きく変容させるような公共事業では、環境保護を重視する住民とそれ以外の住民とで、同じ計画認識の計画評価に及ぼす影響が大きく異なる可能性がある。環境意識の高さによって地域住民を2つのグループに分け、それらの間で計画認識に基づく評価構造が根本的に異なるかをブートストラップChow検定により検証したところ、環境重視グループと非環境重視グループとで計画認識に基づく評価構造が異なることが明らかになった。 また、計画認識から直接的に計画を評価する「直接モデル」と、計画認識から計画の結果を予想し、その予想結果に基づいて計画を評価する,「間接モデル」のどちらが妥当であるかについて、J検定を拡張したブートストラップGMM-J検定を提案して分析を行った結果、直接モデルのほうが妥当であることが明らかになった。この直接モデルにおいて計画評価を歪めている誤った計画認識は、費用負担、埋立地の用途、ミチゲーション策に関する誤解が多いことが明らかになった。
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