研究概要 |
今年度は,ヒト胎盤絨毛がん由来のBewo細胞を半透膜培養カップで培養し,母体側(細胞上面)から胎児側(膜下)へのモデル物質の透過性を評価した。 まず培養日数の影響については,膜上で培養し,小腸膜の透過性試験に用いられるフルオレセイン(蛍光で測定)とマンニトール(HPLCで測定)をモデル化学物質として,母体側に負荷ご48時間までの透過を評価した。その結果,両物質については,培養日数が増すに従って,著しくその透過が低くなり,7-12日でもっとも低くなった.その後はかえって透過係数は上がった.これらの低分子物質の透過は実際の血液胎盤関門では非常に制限されているので,本細胞については,半透膜上に播種後,7-12日に用いるのが適当と思われた. 次に,代表的な環境汚染物質として,多環芳香族炭化水素について,その透過性を評価した.48時間後で20-30%の透過率が得られ,灌流胎盤実験で指摘されているとおり,親油性の環境汚染物質の中程度の透過を裏付けた。特にベンゾ[a]ピレンについてその透過と代謝を調べたところ,わずかではあるが代謝を受けることが明らかとなった.ただし,究極の毒性物質前駆体の生成は検出限界以下であった.また胎児側からの負荷を行うと,能動的な取り込みが見られるアミン酸・脂質・糖類などとは逆に,小腸などと同様に母体側への選択的輸送を観察することができたが,その防護機構は極めて脆弱なものであった。
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