本課題ではまず、培養したユーグレナを種々の変異原で処理し、細胞中に異なる種類のDNA損傷を生じさせる。次いでDNA修復のために一定時間培養する。最後に、葉緑体・ミトコンドリア・核にそれぞれ特異的な遺伝子を標的に定量的PCRを実施し、目的遺伝子がどれだけ増幅されたかで損傷がどの程修復されたかを、オルガネラごとに推定する。前年度までにユーグレナ(Euglena gracilis)の培養環境を整備し、培養条件を確立した。 本年度上半期では、培養したユーグレナを各種変異原で処理した。すなわち電離放射線、紫外線、活性酸素産生剤、メチル化剤、アセチルアミノフルオレン活性体、クロスリンカー(シスプラチン)にユーグレナを曝露、線量・濃度・処理時間を変え、各条件下におけるユーグレナの生存率を測定した。また本年度上半期中は定量的PCR法として、PCR産物を電気泳動し臭化エチジウムで染色、UV照射による発光バンド強度を定量する方法を試していた。しかし本年度半ばに在籍する研究室にリアルタイムPCRシステム(Cepheid社製 Smartcycler II System.)が導入された。リアルタイムPCRでは電気泳動が不要、操作も簡便で、またPCRの再現性も従来法に比べ勝っていたため、以降の本課題全実験にリアルタイムPCR法を採用することにした。現在各オルガネラに特徴的な遺伝子のうち増幅に最適な箇所や、PCRの条件を決定中である。
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