研究概要 |
本年度は有機スズ化合物回収のための化学反応性捕集材の作成を行い,その機能について評価した.捕集材としてはスチレンモノマーと有機スズと反応する部位を持つモノマー(2-ビニルピリジン,4-ビニルピリジン,4-位にアミノピリジル基を有するスチレンなど)との高分子共重合体を合成した.機能を評価するにはその捕集材の大きさ,形状が一定であることが必要であることから,合成は懸濁重合により行い,粒子径144〜300μmのものを用いた.回収操作はまず,捕集材500mgをカラムに詰め,試料水を流す際のチャネリングの影響を防ぐため,メタノール,水の順に流し,コンディショニングを行った.次に,TBT(トリブチルスズ).またはDBT(ジブチルスズ)を1ppm溶かした試料水500mlを流し,流出した水に含まれる有機スズの量を測定するごとにより回収率を算出した.有機スズの定量はICP発光分析装置により行った.初めに対照実験として従来よく用いられてきたスチレンホモポリマーによる回収実験を行ったところTBT(99%),DBT(90%)とDBTでは回収率が低下する傾向が見られた.これは疎水性相互作用のみによる吸着では,DBTのように疎水性の小さなスズ化合物において吸着効率が下がることを示している.一方,今回新たに合成したピリジン部位を有する共重合体では,いずれの捕集材においてもTBT,DBTともに100%回収することができた.これはスズがピリジンと強い相互作用することにより,疎水性の小さなDBTも効率よく吸着されたと考えられる.
|