これまでに植物繊維のパルプ化・摩砕により得るミクロフィブリル化セルロース(MFC)を生分解性樹脂あるいはフェノール樹脂と複合すると、従来の植物繊維複合材料とは大きく異なる高強度材料が製造できることを見いだした。しかしながら、MFCは部分的にはナノレベルまで解繊されているものの、大部分は、幅1〜5ミクロン(μm)程度までのミクロフィブリル束である。本研究では「植物繊維からのナノフィブリルの製造とグリーンナノコンポジットの創生」を目指し、より均一で微細なナノフィブリルを製造する手法の開発を試みるとともに、そのようなナノファイバーを再構築したナノコンポジットの性能について検討する。 今年度は、既存の高圧ホモジナイザー処理で得られる状態からさらにナノファイバー化を進めるために、ホモジナイザー処理パルプ繊維を酵素処理(エンドグルカナーゼ)して、ミクロフィブリル間の凝集力を低下させてから、混練機により高濃度で混練した。また、ホモジナイザー処理繊維を超微細摩砕機によりさらに精砕した。いずれも、得られた材料についてナノファイバー化の指標として保水率を測定すると共に、走査型プローブ顕微鏡を用いて形態を観察した。 酵素処理の有無により、得られた材料の形態には大きな差違が認められた。しかし、その形態変化は、ミクロフィブリルよりさらに細かなオーダーにまで達しており、望む形態変化を通り越していた。これは、酵素処理の程度が強いためと思われる。次年度は、今年度検討した混練条件の範囲において、よりマイルドな酵素処理について検討する必要がある。
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