[目的]フロンガスの大気中への放出によるオゾン層の破壊と温室効果への寄与が知られている。本研究ではフロンガスの分解処理法として10kV未満の極軟X線(USXと呼ぶ)照射による方法を研究した。[方法]USXの発生装置としてタンゲステン・ターゲットの透過型のX線管を使用した。X線の最大エネルギーは9.5keVの連続X線である。フロンガスは厚さ50μmの窓付きのチェムバーに入れて照射した。このチェムバーにフロンガスとNaOH水溶液を入れた。照射によるフロンガスの分解で生じたClをHaOH水溶液で捕集した。チェムバーはフロンガスの沸点以上に保つために30℃に保った。NaOH水溶液中のClはイオンクロマトグラフィによって濃度測定をした。[結果と結論]テドラバッグに空気だけとフロンガスだけを入れて、USXを照射してバッグを透過したUSXを薄窓型GM計数管で測定した。結果よりUSXのフロンガスによる吸収は空気の吸収より60倍大きいことが分かった。9.5keV以下の連続X線を5keVの光子で代表させて、フロンガスの構成原子の質量エネルギー吸収を検討したところ、USXに対するフロンガスの特異的な吸収は構成原子のClによる吸収であることが分かった。照射時間を変えてNaOH水溶液中のCl濃度を測定した。明らかにCl濃度は照射時間に比例して増大し、照射によって分解が進行することが分かった。X線菅にかけた電力は最大で1.8kW・hで、小さなエネルギーでフロンガスが分解することが分かった。
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