本萌芽研究では、研究代表者が考案した走査型ローレンツ力顕微鏡の磁気分布像の水平分解能を約一桁すなわち、数十ナノメートル程度に向上させ、磁気分布像と同時に凹凸像をも観察することを可能とする機器開発を行うことを目的とする。走査型ローレンツ力顕微鏡では、導電性カンチレバーを磁性体表面に接触させ、角周波数ωの交流電圧を導電性カンチレバーに印加することにより、カンチレバー先端のチップ中に交流電流i(t)を流す。この時、電流i(t)とサンプル表面の漏れ磁束密度Bによって、ローレンツ力F(t)が角周波数ωでカンチレバーに加わる。このローレンツ力によるカンチレバーの横方向の歪みとしてロックインアンプを用いて検出する。この横方向歪みはローレンツ力すなわち磁束密度Bに比例するため、カンチレバーの横方向歪みに対応するロックインアンプのω成分の面内分布は、磁気分布像に対応することになる。さらに、カンチレバーの縦方向歪みを一定に保つフィードバックを導入し、いわゆるコンタクトモードでカンチレバーをスキャンすることにより、磁気分布像と同時に凹凸像を観察することができる。磁気イメージングの水平分解能はカンチレバー先端のチップ形状に大きく依存する。これまでに我々は、ピラミッド先端が約200nmに渡りサンプルに対して平らになっているピラミッド形状のPt製チップを用いてハードディスクの磁気分布像を水平分解能は400nm程度で測定してきた。平成15年度は、ハイアスペクト比を有するカンチレバーとして、導電性材料であるダイヤモンドをチップにコーティングしたものを用いることにより、磁気分布像の水平分解能を向上させることを試みた。現時点では、ダイヤモンドコートカンチレバー先端とハードディスク表面の接触抵抗が大きいなど理由により、ローレンツ力像の測定に必要な電流が流せず、磁気分布像を画像化には至っていないが、最近ようやく接触抵抗の問題を克服しつつある。今後は、ダイヤモンドコートカンチレバーを用いて、ハードディスクの磁気分布像の測定を行い、水平分解能の向上をはかっていく予定である。
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