本萌芽研究では、研究代表者が考案した走査型ローレンツ力顕微鏡の磁気分布像の水平分解能を約一桁すなわち数十ナノメートル程度に向上させ、磁気分布像と表面凹凸像の同時観察を行う機器開発を行うことを目的とする。走査型ローレンツ力顕微鏡では、導電性カンチレバーを磁性体表面に接触させ、ファンクションジェネレータを用いて交流電圧を導電性カンチレバーに印加することによりカンチレバー先端のチップに交流電流を流す。この電流と磁性サンプルからの漏れ磁束によりローレンツ力が発生し、カンチレバー横方向の歪みに起因した変位をロックインアンプを用いて検出する。このカンチレバーの横方向の歪みは、磁束密度に依存するため、ロックインアンプ出力を画像化することで磁気分布像を観察できる。また、カンチレバーの縦方向変位を一定に保つフィードバックを導入するいわゆる接触型原子間力顕微鏡の原理を使用することにより表面凹凸像の同時観察が可能である。 平成16年度は、新たに導電性ダイヤモンドコートカンチレバーを用いて走査型ローレンツ力顕微鏡像を安定して観察した上で、水平方向分解能を向上させることを試みた。導電性ダイヤモンドコートカンチレバーを使用することによりチップの摩耗を低減し、フィードバックの最適化を施し電流の安定化を図ることにより、磁性体の鉄コバルトの磁区ドメインの明瞭な磁気分布像を観察し、表面凹凸像も同時に観察することに成功した。水平分解能としては100ナノメートル以下を達成した。
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