電極上に互いに混合しない油水界面を乗せると、電極相|液相および油相|水相界面が出会う三相界面ができる。三相界面は面と面との交線であるから、数学的には無限小幅の線、現実には分子幅の線になるはずである。三相界面反応を応用するには定常状態となることが必要だが、これまでは油中にイオンが拡散してしまうので、定常状態が得られていなかった。新しい発想として次の条件を考えた。(a)油相にのみ、電荷を持たない酸化還元種があること、(b)油相の酸化還元種は水相のイオンと出会って始めて電極反応すること、(c)水相のイオンが油相に移動しないこと。これら条件を本研究室で開発した界面の操作法およびイオン移動の制御・測定法を応用することにより、定常状態が達成できる可能性を見出した。つまり、幾何学的な反応界面を利用してナノメートル幅の反応場、およびその結果であるナノメートル幅で長さがセンチメートルもある析出層を半導体表面に構築を試みる。(1)電極の上に油滴がある系のビデオ(既設品)を撮れる電気化学セルを設計・作製した。(2)フェロセンを含むニトロベンゼンの滴を電極に置き、そこに支持電解質を含む水相を入れた。逆に、始めに水相を作っておき、その後に油滴を置いた系も作った。(3)陰イオンが過塩素酸であるときには、三相界面ができ、電極に近いところからフェロセンが還元されて、色の分布ができた。(4)支持電解質として、油相に移動しにくい硫酸イオンを用いたところ、電流電位曲線に定常状態が現れ、三相界面反応の電流であることがわかった。(5)その写真より、三相界面の反応領域は極めて薄いリングの形をしていて、これをリング状バンド電極に近似した。(6)電位掃引速度の変化による測定値から、三相界面の反応幅(30μm)を算出した。(7)界面ではエマルションが生成していることがわかった。
|