1.Pドープをおこなった試料にDF004法を適用してドープ領域の電子顕微鏡観察をおこなった。その結果、Asドープ試料の像強度の分布が、SIMSで測定したドープP元素の分布と極めてよく一致することが分かった。さらに、表面から同じ深さでも場所により像強度が異なることから、2次元的なドープ濃度の不均を可視化することも可能であることが明らかになった。 2.ASドープ濃度を1桁小さくした試料(最高濃度領域で0.1at.%)からFIBで作製した電子顕微鏡用試料の測定をおこなって像強度とSIMSデータを比較したところ、像強度がドープ濃度に比例して小さくならない現象が明らかになった。この事実は、ドープ元素以外に試料結晶の不完全性を生じさせる原因があることを示している。従来の重元素を保護膜に用いたFIB加工、軽元素を保護膜に用いたFIB加工、機械研磨+イオンミリングの試料作成法を用い、ドープ試料、ノンドープ試料の実験試料を作製してDF004の実験を行った。その結果、重元素を保護膜に用いたFIB加工では、保護膜をつける過程で試料にダメージが入り、その結果としてDF004の電子顕微鏡像にコントラストを生じることが分かった。したがって、FIB加工して試料作製する場合は、保護膜として軽元素を用いる必要があることが明らかとなった。 3.結晶の乱れを考慮したX線用の統計動力学理論を電子線に適応することで、実験で観測されているロッキングカーブの変化(強度増大と非対称性)が再現できることが分かった。しかし、乱れの小さい低濃度ドープ領域には適用できるものの、ドープ濃度が1at.%になると実験を再現できないことも明らかになった。
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