研究概要 |
電子線と物質の相互作用はかなり研究されてきたが未知の部分が多い。電子線を用いたナノメートルスケールの微細加工(ナノファブリケーション)は重要な技術であるが、実際の利用には解決すべき点が多い。ここでは、次のような新しい方法を提案した。有機材料をシリコンウェハーに薄くコーティングしてそれに電子線照射を施し、生じた欠陥を成長核とする金属薄膜の選択成長を試みる。この新しい手法を試みること、及びそのプロセス条件を明らかにすると共に物理的機構を明らかにして、ナノファブリケーション応用への要素技術とする事が本研究の目的である。 今年度は、上記の目的を達成するためのツールとして、高分解能電子銃を利用するか、電子銃用のマスクをもちいるか検討を行った。コストパフォーマンスを考慮した結果、電子線照射用マスクを用いることして、その設計・作製を行った。マスクの構造はTa/SiC/Si基板メンブレン膜厚はTa=0.5μm, SiC=0.5μm、パタン寸法は0.5、1、1.5、2、3、4、5、6、8、10μmのライン&スペースとして、製作依頼を行い完成した。次年度は、これを用いて当初の計画の選択成長の実験を行う。 また、電子線に高感度に応答する有機材料は紫外線とも強く相互作用するので、有機材料と紫外線ナノ秒パルスレーザ光照射を援用した金属薄膜のレーザリフトオフ法の研究も進めた。この手法の場合は、電子線のようなナノレベルでのパターニングは困難だが、原理的にはサブミクロンレベルでのパターニングが可能である。実際に本レーザリフトオフ法を用いて、強誘電体メモリ用酸化物薄膜用電極として重要なPt薄膜を、容易にパターニング可能であることを示し、そのパターニング条件の最適化を行った。この新規なレーザリフトオフ法の物理的機構を温度シミュレーションにより調べ、単純なレーザ光照射による温度上昇だけでは本現象は説明できないことを明らかにした。 このように、紫外線と電子線を目的に応じて使い分けることにより、スループットの高い金属薄膜のパターニングが可能になるものと期待される。
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