コレラ毒素は、毒素活性を持つタンパク質(Aサブユニット)と、細胞表面の毒素受容体(糖資質ガングリオシド)に結合する役割を持つタンパク質(Bサブユニット)の2種類のタンパク質から構成されている。細胞表面のカベオラと言う凹部のガングリオシドに結合した毒素はエンドサイトーシスによって細胞内へと取り込まれてゆく。このBサブユニットが示す毒素受容体との特異的相互作用を利用し、Aサブユニットの代わりに目的のタンパク質をBサブユニットに会合させれば、ガングリオシドに特異的に依存する、目的タンパク質の細胞内導入が行える。 1.Bサブユニットとスギ花粉症抗原の融合タンパク質の設計と作製 コレラ毒素Bサブユニットとスギ花粉症抗原を結合させたタンパク質遺伝子を設計し、その発現を行った。抗原にはスギ花粉タンパク質であるCry j1のT細胞抗原決定基を数個選択し、そのアミノ酸配列をコードする合成DNAをBサブユニット遺伝子に結合させ、融合タンパク質遺伝子を作製した。遺伝子を大腸菌及び枯草菌の細胞内で発現し、融合タンパク質を得た。(第46回日本生化学会中国・四国支部例会にて発表) 2.無細胞タンパク質合成系によるBサブユニットと緑色蛍光タンパク質(GFP)複合体の作製 コレラ毒素Bサブユニット遺伝子を用い、無細胞タンパク質合成系でBサブユニットを発現させた。非組換えBサブユニットと同様の5量体でガングリオシドへの結合性を示すBサブユニットが得られた。また、Bサブユニットへの結合に必要なペプチドを付加したGFPをBサブユニットと共に発現させたが、GFPの発現は見られたものの両者の複合体は形成されなかった。複合体の形成には新生タンパク質の折りたたみが関与していることが推測された。
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