(1)各種特性のDLC膜の成膜(安丸) 非平衡マグネトロンスパッタリング(UBMS)装置を用いて、基板(ステンレス鋼)との密着性を向上させるために、Crの中間層を蒸着後DLC膜を成膜した。なお、蒸着時のCH_4ガスのArガスとの混合比やバイアス電位を調整し、さらにCrを同時蒸着により5〜10%ドーピングさせることにより、硬度や導電性・光学的特性を変化させたDLC膜を開発した。 (2)フェムト秒レーザーによるDLC膜の表面加工(大気中)(宮崎) 薄膜制御加工用に精密に制御可能なフェムト秒レーザーシステムを開発した。その後レーザー特性(パルスエネルギー、波長(赤外800nm〜紫外267nm)、偏光(円偏光と直線偏光))を変化させてDLC膜に200μm程度のスポットで1〜100パルス照射し、DLC膜のアブレーション加工を行った。 (3)薄膜表面解析(安丸) レーザーアブレーション後の照射面に対し、マイクロスコープ顕微鏡(レンズ購入)、EDX付属FE-SEMで照射面の高精度観察や元素分析を行い、原子間力顕微鏡(AFM)で加工面のナノレベルの3次元計測を行った。また、極微レーザーラマン分光装置により、照射面の状態変化を調べた。その結果、アブレーション閾値近傍の低フルーエンスでDLC膜表面を照射すると、薄膜の表面に周期的ナノ構造が形成されると同時に、DLC膜がGC(ガラス状炭素)膜に改質することをラマン分光の解析により見出した。GCはグラファイトの一種であり、結晶子サイズが約3nmと非常に小さく高い硬度を持った硬質炭素材で、バルク材が製品化されている。このDLC膜から形成されるGC層は、DLCにない導電性、耐熱性、耐酸化性などの優れた物性を有しているはずであり、新しい機能性炭素系薄膜として広範な工学的応用分野が期待できる。
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