フェムト秒レーザーをDLC薄膜表面に平面状に照射し、レーザー条件(レーザーの強度、パルス数、スポット径など)を変化させて、周期的微細構造(ナノ構造)を約15mm角で均一に加工する技術を開発した。 ナノ構造が生成されたDLC薄膜の摩擦係数を、ナノメカニカル試験装置を用いて測定した。100〜1000μNの荷重でダイヤモンドチップ(先端半径1μm)を用いて測定したところ、未照射面で0.1を示す摩擦係数が、レーザー照射により0.2〜0.3に増加することが判明した。また、スクラッチ時のチップの侵入深さが、レーザー強度や荷重が増えるに伴い増加した。この荷重域では、レーザー照射による硬度の低下や表面に形成されたナノ構造の凹凸の影響により摩擦係数が増加したと考えられる。 次に、福井大学本田助教授にご協力いただき、原子間力顕微鏡(AFM)を用いたさらに荷重の小さいナノ摩擦試験を行った。垂直荷重を20〜130nNと変化させ、測定範囲1μm×1μm、すべり速度2μm/sとして、コンタクトモード(垂直荷重一定)で測定した。表面測定のプローブには、市販のカンチレバーにガラス球を接着したガラス球探針を用いた。その結果、この荷重域では、ナノ加工により摩擦力が約1/3、引き離し力が約1/4と大幅に低減することが判明した。 また、ボールオンディスク型摩擦摩耗試験により、ナノ構造が生成されたDLC薄膜表面のマクロなトライボロジー特性を調べた。その結果、鉄系の軸受鋼ボールが相手材の時は摩擦係数が低下することが判明した。さらにナノ構造生成面にMoS_2を0.5〜1μm被覆した複合膜を作製し特性を調べたところ、超硬ボールに対しては約1/4、軸受鋼ボールに対しては約2/5と摩擦係数が大幅に低下することが判明し、複合化の効果が大きいことを見出した。
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