研究概要 |
本研究は,Si(113)高指数面上でビスマスナノワイヤ成長の制御を試み,ビスマスナノワイヤを用いたSi表面上におけるナノ構造物同士をつなぐネットワーク形成法の確立へ道を開こうとするものである.過去,申請者らの研究により,Si(100)へのBi原子吸着層には,上記のビスマスナノワイヤの他にナノピット,超周期超格子など多様な構造が形成されることが明らかになっている.これらの多様な構造を形成する過程の中からビスマスナノワイヤ成長のチャネルが選択されるためには,基板温度が重要であり,いったんナノワイヤが成長しだすと,ステップ位置のSi原子をたぐり寄せながらどこまでも成長することも明らかになっている. これらのことを基礎知識として,本研究では特に,(1)Si(113)高指数面こおけるステップの温度安定性,(2)Si(113)高指数面におけるビスマスナノワイヤの成長条件(主として基板温度との関係)を明らかにすることで,(3)ビスマスナノワイヤ形成の制御を目指すことを目的としている. 研究の成否を握る鍵は,Si高指数面のステップ位置原子の高温における挙動を明らかにすることにある. そのことを解明するために初年度にあたる今年度は,低速電子線回折(LEED)を導入し,これによりSiの高温観察に焦点を置いて研究を進めた.LEEDによる高温観察を安定に行うためのノウハウを蓄積するために,試料はすでに解明されているSi(111)およびSi(100)を用いた.その結果,常温からSiの融点付近である1400℃までの範囲で安定した高温LEED観察を行えるようになった.また,回折像のエネルギー依存性も得ることができるようになった. 今後の計画としては,今回得たノウハウを活用してSi(113)高指数面の高温観察を行い,Biを吸着させてビスマスナノワイヤが現れる条件を探る予定である.
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