研究概要 |
液-液界面析出法によって、単結晶フラーレンナノ細線と各種フラーレン誘導体ナノウィスカーの合成を行なうことを試みた。特に,C_<60>-C_<70>2成分系単結晶ナノウィスカーとC_<60>のマロン酸エステル誘導体(C_<60>[C(COOC_2H_5)_2])のナノウィスカーの合成に成功した。C_<60>[C(COOC_2H_5)2]ウィスカーの成長軸は、C_<60>ケージの最密充填方向に一致するものがほとんどであり、C_<60>ケージ間の距離は、fccのC_<60>結晶における最密充填方向のC_<60>ケージ間距離とほとんど一致していた。このことは、ウィスカーが成長するためには,C_<60>ケージが密に接触することが必要であることを意味している。すなわち,C_<60>ケージ間の電子密度が増大するように配列することが、ウィスカー形成のメカニズムとなっていることが推論される。さらに,C_<60>-C_<60>[C(COOC_2H_5)2]2成分系ナノウィスカーの合成に成功した。これは,C_<60>をマトリックスとするウィスカー中に約5mass%のC_<60>[C(COOC_2H_5)2]分子を固溶させることを可能とするものである。さらに、C_<60>C_3H_7Nを12mass%固溶させたC_<60>ナノウィスカーの合成に成功した。以上の研究結果は、C_<60>をマトリックスとして、C_<60>以外の様々なフラーレンを固溶させたウィスカーを作製することができることを示しており、多様なフラーレンナノウィスカーを合成できることが明らかになった。置換基は、C_<60>分子の電子状態を変化させるため、C_<60>ナノウィスカーの半導体的性質を様々に変化させることができ、エレクトロニクス関係への応用範囲が広がる。また、上記の成果は、限りない種類の触媒を開発することが可能となったことを示すものである。
|