本研究は、磁性ナノロッドを内部に持つ外部磁場制御型DDS(ドラッグデリバリーシステム)ナノカプセルを開発することを目的にしている。この磁性ナノロッドをカプセルの中に入れ、外部から交流磁場をかけて磁性ナノロッドをカプセル内で回転させることで、開環したカプセルから放出する薬物量を人為的にコントロールできるキャリアーを実現させることをめざして研究を行った。 そこで、平成17年度は昨年度に続いて、磁性ナノロッドカプセルの作成技術の開発を行った。 昨年度までの結果から、アルミニウムの薄板を硫酸、シュウ酸、リン酸などの溶液中で陽極酸化することにより、孔径が数ナノメーターから数十ナノメーターである蜂の巣状の規則正しい垂直孔を板表面に形成させることができ、その時形成されるポーラスの径と深さは電圧と時間で制御できることがわかっている。そこで、新たに開発した高周波交流電気めっき法を用いて、硫酸コバルトや硫酸ニッケル溶液中での電着によりポーラスアルミナの孔の中にコバルトやニッケルを埋め込み、コバルト、ニッケルのナノロッドを作成した。そして、クロム酸とリン酸の混合液によりアルミナを溶かし、それらのナノロッドを溶液中に取り出すことに成功した。 溶液中に取り出したナノロッドのサイズをTEM(透過電子顕微鏡)で観察したところ、ポーラスアルミナの細孔径にしたがった直径約30nmの太さと、めっき時間に依存したサブミクロンの長さで、全てのナノロッドがほぼ同じ形状でそろっていた。このようにきれいにそろった太さと長さを持つナノロッドを作成でき、またそのサイズをポーラスアルミナの細孔サイズを変えることから制御できる技術を確立することができた。これにより、磁性ナノロッドを内包するカプセルを効率的に作成することが可能になった。
|