研究概要 |
平成15年度前半は,感光性ガラスに対するグレイスケールリソグラフィを応用して,連続的に深さを変化させた全ガラス製3次元微小細管を製作方法の確立を行った.エッチングによる溝切りで製作される3次元微小細管は,最終的に上部を透明なガラスカバーで覆う必要がある.しかし感光性ガラスの熱処理・エッチング工程後には必然的に変形と表面荒れが生じ,これがカバーガラスの接合に大きな障害となっていた.そこで3次元微小細管を形成した後のガラスに対して新たに研削工程を施し,変形と表面荒れを除去した.さらに,水ガラス溶液によるガラス部品同士の接着を新たに行うことで全ガラス製3次元微小細管の製作に成功した.微小細管の幅は500μm,最大深さは300μm程度である.連続して傾斜を設けた微小細管中の流れをフェノールフタレイン溶液の呈色を用いて観察し,流れのよどみによって2液の混合が促されることを確かめた.これらの成果は2003年の国際会議(μ-TAS2003)で報告した.年度後半はバイオ用微小デバイス材料に広く用いられているPDMS(ポリジメチルシロキサン)の3次元微細加工を試みた.ますPDMSの型となるネガ型フォトレジスト(SU-8)に対するグレイスケールリソグラフィを行った.ネガ型レジストでは紫外線照射部分が硬化するため,紫外線量の少ない場所でのレジストと基板の密着性の確保が問題となる.そこで,透明な基板側からグレイスケールマスクを通じて露光を行う新規露光法を試みた.この手法により露光現像後のレジスト高さをマスクにより制御できることを確かめた.さらに形成したレジストの3次元構造体をPDMSに転写してPDMSの3次元構造体を得ることに成功した.PDMSの3次元構造体は感光性ガラスに比べ透明であり,より微小な細管を製作できるという特徴がある.来年度はこのPDMSの3次元微小細管の検討も行っていく予定である.
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