研究概要 |
本研究では、まず、Pareto superiority (優位)よりも強い、Pareto strong superiority (強優位)の概念を新たに提案した。すなわち、システム内2つの状態AとBに対して、全てのユーザに対して、Aにおけるユーティリティが、Bにおけるユーティリティよりも大きいとき、状態Aは、状態BよりもPareto強優位であるとする。このPareto強優位の概念を用いて、Braessパラドックスなどの、逆説的な現象を明確に説明することを試みた。あるNash均衡状態に対して,各ユーザの決定の自由度がより低い、Pareto強優位な別のNash均衡状態が存在するという、逆説的な例が,Braessパラドックスなどのパラドックスである。具体的には、状態Bに対して、新たに結合を加えた状態をAとし、A, B共にNash均衡の場合、各ユーザに決定の自由度が増加するにもかかわらず、かえって全てのユーザのユーティリティが減少するという逆説的な現象が、パラドックスである。 提案したPareto強優位の概念に基づき、システムに2つの状態AとBがあるとき、各ユーザのAにおけるユーティリティに対するBにおけるユーティリティの比を考え、その最小値を、AのBに対するPareto強優位の程度を表す指標と提案した(ユーティリティの値が正であるという場合のみを考える)。それに基づき、パラドックスの大きさを表す指標を提案した。 提案した指標に基づき、分散コンピュータシステムについて、数値的に検討し、パラドックスの大きさが最大になるのが対称的なシステムの場合であることを観測した。 また、状態A, B共にNash均衡の場合、各ユーザの決定の自由度の増加により、全ユーザのユーティリティが向上する場合が逆説的でなく自然であるが、その向上率についても検討し、限りなく大きくなる場合を見出した。
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