研究概要 |
東大生産技術研究所に導入された3次元空間運動体模擬装置(ドライビング・シミュレータ)は,高速道路の模擬視界を見ながら,音響効果による臨場感ある状況で運転走行が可能である.まず,このシミュレータに組み込まれている道路モデルに,橋梁が落橋した区間と落石が生じた区間をCADで作成し画像ファイルに追加した.またシミユレータの制御プログラムを改良し,3次元の地震動時刻歴を任意の時点で車両モデルを通して入力できるようにし,被験者実験に向けた準備を行った. 次に,直前地震通報に対する運転者の反応についての模擬走行実験を行った.直前地震通報を行った場合と行わない場合で,地震波が到来した時点での運転者の反応がどのように異なるかについて,ドライビング・シミュレータを用いた被験者実験により調べた.地震発生の通報は,カーラジオから音声で「地震発生.減速して路肩に停車して下さい.」と流すことにした.これはこのような方法が,現状では最も現実的な通報手段と考えられるからである.直前通報から地震波到着までの余裕時間を3秒とし,1995年兵庫県南部地震において,宝塚付近の高速道路を走行中の運転者を想定して,どのように震動に対して運転操作行動をとるかを,早期警報との関連から調査した.そめ結果,直前通報がない場合は11人中,9人の被験者が前方の障害物に衝突したのに対して,直前通報を行った場合は11人中,9人が障害物を避けることができた.このように,地震直前通報が地震直後の2次災害防止に有効なことが定量的に示された.
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