近年コンピュータウィルスは、インターネット社会で、大きな社会問題となってきている。商用のアンチウィルスを使った解決法が現在用いられているが、その効果的な使用についての定量的な研究は、なされていない。そこで、本研究ではコンピュータウィルスの繁殖の様子を観察し、確率モデルや微分方程式系などを使い数学的にモデル化し、その効率的な撃退方法を検討した。特に以下のような成果が得られた。 1.ゲートウェー型とクライアント型のアンチウィルスの比較 コンピュータウィルスの繁殖と防御の様子を出生死滅過程にモデル化することにより、ゲートウェーでのアンチウィルスとクライアントでのアンチウィルスの効果を評価した。また、流体型でモデル化した場合と比較を行い、確率的なふるまいの評価が重要であることを示した。 2.能動型のアンチウィルスの性能評価 Blasterのように、拡散能力の高いウィルスを実際にネットワーク上で観察することによって、その感染の仕方をモデル化し、最悪のウィルスがどの程度の早さで拡散できるかを評価した。また、能動型のアンチウィルスの一種であるNachiの拡散の様子を観察することにより、Blasterへの防御効果とNachiの拡散をモデル化し、最適なNachiの設計を検討した。 3.大学のゲートウェーでの実際のウィルス活動をモニターし、個々のウィルスが確定的な振る舞いをしている場合にも、そのネットワーク上での拡散の様子がPoisson Processで近似できることを確認した。
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