昨年度までの研究から、DsRedを用いたタンパク質間相互作用の可視化技術に関して、バックグラウンドの蛍光を低減し、かつ相互作用による蛍光自体は強化できる変異型DsRedとその発現用ベクターの開発に成功し、これを「RUBYシステム」と呼ぶことにした。 そこで本年度は、この改良型システムを用いて、骨芽細胞文化制御因子であるRunx2をモデル系としてさらなる解析を進めた。最終目標であるライブラリー中からのランダムスクリーニングに入る前に、結合に必要なドメイン構造の解析が可能かどうか、またこれまで用いて来た必要最少領域だけでなく全長のタンパク質を用いて同様の解析が可能かどうか確認を行った。その結果、C末領域に存在する相互作用阻害ドメインの存在を検出することができた。また、DNA結合のために必要な本来のパートナー分子であるCBFβの他に、刺激依存性に相互作用を起こすことが知られているSmadとの相互作用検出を試みたが、うまく検出されなかった。 そこで、細胞刺激依存的な誘導性の相互作用を解析できるかどうかについて、他の転写因子をモデル系として解析を行った。その結果、細胞刺激時においてのみ相互作用を起こす3種類の組み合わせの転写因子において、刺激依存的な蛍光が観察され、時間変化にともなう相互作用の検出も可能であることが示された。 また、ランダムなライブラリー作成では、蛍光タンパク質とのフレームが正しく合うだけでも1/3の確率になってしまうことは当初から予想されたが、それに加えて遺伝子ごとに蛍光強度の変動が大きいことが判明したため、初めから正しく発現ベクターに組み込んで発現を確認したライブラリーを作成することが有効であることが明らかとなった。本研究において30遺伝子の発現ベクターを構築した。今後はライブラリーの拡充を進めることが重要である。
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