研究概要 |
平成16年度に続き、オーストラリアに生息する有袋類の一種であるtammar wallaby(ワラビー)のゲノムインプリンティング遺伝子の探索を行った。用いたcDNAライブラリーは、共同研究者のメルボルン大学・M.Renfree教授から供与を受けたtammar wallabyの胎児サンプルから作製したものである。平成15年度のPEG1/MEST,IGF2に続き、真獣類ではインプリンティング遺伝子であるMEG1/GRB10,SGCE遺伝子の解析を行ったところ、両遺伝子とも両親性発現を示し、有袋類ではインプリンティングがかかっていないことが明らかになった。当該研究の結果から真獣類と有袋類に共通するインプリンティング遺伝子の数は真獣類ほど多くない可能性がでてきた。 これまで真獣類の相同遺伝子のスクリーニングには、マウスと相同性の高い部位を用いたPCRやマウスのcDNAをプローブにして行ってきたが、昨年12月末に南アメリカに生息する有袋類、オポッサムのゲノムプロジェクトから一部のDNA配列が報告された。この配列を参考にするとワラビーの相同遺伝子が確実に分離できるようになったため、当初の計画であった真獣類における10カ所以上のインプリンティング領域に相同するワラビーのゲノム領域の解析が可能となった。今後は有袋類と真獣類におけるゲノムインプリンティングの共通性を領域単位からゲノムワイドに広げ、この2つの哺乳類のグループ内でのゲノムインプリンティングの制御方式において、その分子機構の共通性や違いを明らかにしていく。
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