研究概要 |
単子葉のモデル植物でかつ主要穀物であるイネの網羅的ゲノム情報の蓄積が急速に進みつつある状況下で、我々は、コメの主要成分である澱粉をつくるWaxy遺伝子を標的とした遺伝子ターゲティングを再現性のある実験系として確立することに世界で初めて成功した(Nature biotech.2002,20:1030)。本ターゲティング法での欠失変異誘導の可能性を探り、遺伝子機能解析のみならず遺伝子をコードしていないスペーサー領域の高次ゲノム保持機構を介した動的ゲノムの機能解明への展開を試みるため、まず、すでに確立したWaxy遺伝子で、Waxyのコード領域約3.0kbの欠失改変を行った。すでに構築した各々6.3kbと6.8kbの相同組換え領域を持つWxyターゲティング・ベクターの中間ベクターから、Waxyのコード領域約3.3kbを削除するターゲティング・ベクターを構築した。次いで、大規模アグロバクテリウム形質転換の更なる効率化を進め、この形質転換法に基づき同ベクターを用いて形質転換を行い、ポジティブ・ネガティブ選択後、相同組換え体のPCRスクリーニングを進めたところ、PCR解析で相同組換えが生じたと推定される複数のカルスを得た。再生系統を作出し、さらに詳しい解析を進めている。また冠水ストレスに関わるアルコール脱水素酵素(Alcohol dehydrogenase) Adh遺伝子は第11染色体短腕にAdh1とAdh2が約30kbの領域でタンデムに並んでいることから、Adh1とAdh2遺伝子のハイブリッド遺伝子をデザインしたターゲティング・ベクターによって一挙に約30kbを欠失させるゲノム改変をめざし、Adh領域30kb欠失誘導ターゲティング・ベクターの構築が完了した。
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