本研究では、Alzheimer病発症の核となりうるガングリオシドGM1とアミロイドの相互作用を解析することを目的とし、アミロイドペプチドの合成および、固体NMR法による精密構造解析を行った。 本研究の成果をまとめる。 1.Aβ(1-40)の合成 本研究では、β-アミロイドモデルペプチド、Aβ(1-40)を合成した。アミノ酸配列を以下に示す。 DAEFRHDSGYEVHHQKLVFFAEDVGSNKGAIIGLMVGGVV Aβ(1-40)は、合成が困難なペプチドであると言われているが、本研究では高収率で目的物を得ることができた。 2.試料調整 Aβ(1-40)は溶解性が悪く、NMR測定に用いるガラスプレート試料の調整が困難であったが、検討の結果、ベンゼンに可溶であることがわかり、比較的容易に試料調整を行うことが可能となった。 3.DMPC/Aβの角度依存固体NMR測定結果 調整した試料について、角度依存固体NMRの測定を行った。測定に際し、NMRの最新のオペレーティングシステムを購入することで、円滑な測定を可能にした。 DMPC/Aβ(20:1)の角度依存NMR測定の結果から、約50%は無配向成分となっており、Aβ(1-40)の添加によって膜破壊がおきていることが示唆された。また興味深いことに、一部、30〜40°の傾きを持った配向もみられ、局所的な膜形成の存在が大きく示唆された。 4.DMPC/Aβ/GM1の角度依存固体NMR測定結果 (3)にガングリオシドGM1を添加した系では、配向していることがわかった。これはGM1ガングリオシドとAβが特異的に結合し、その結果、膜破壊が阻害されたのではないかと結論づけた。 5.今後の予定 今年度得られたデータは、関連分野に対して重要な構造的知見であると考えている。今後は、決定的なモデルを提案し、国際学会、雑誌等で発表する予定である。
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