【平成16年度実績】5^〜20nmサイズの金コロイドに結合したストレプトアビジン蛋白質(Gold-avidin)を用いて、様々なビオチン結合型生体物質との反応によるGold-avidinの赤外スペクトルの変化を調べた。その結果、アトモル(amol)レベルでビオチンを結合させた物質(オリゴdTやProteinL、IgM抗体など)自体の赤外吸収が観測されないくらいでも、Gold-avidinの増強された赤外吸収により、結合による変化を捉えることが出来た。しかし、不思議なことにavidin1モルあたり1モル以上のビオチン結合物質が結合していると、Gold-avidinの赤外吸収に「ゆらぎ」が起こって吸収ピーク比が不安定になる現象を認めた。これは、結合によって金コロイドに負荷が掛かり、分解までは行かないまでも、構造が歪んだり、金と蛋白との結合角度等が不安定になるためではないかと予想している。 また、選択的高感度な分析として、2mm角の小さな金薄膜プレート(Gold-plate)を使う方法を開発した。Gold-plateに神経細胞接着因子(NCAM)に対する1次抗体を結合させ(MUA法)、血清中のNCAMと反応させ、結合した極微量のNCAMの蛋白部分と糖鎖を直接FTIR-ATR法で測定することに成功した。それにさらに、二次抗体などとGold-avidinを結合させ、ある条件下で還元的に処理し金コロイドを安定化させると、10倍程度の増強効果を得て、高感度に測定できることが判明した。 このことによって、正常被験者と精神疾患患者(千葉県の病院と共同研究)の血清中のNCAM分子構造の違いを測定できた。ここでは特に糖鎖の赤外吸収強度に差が認められたので、疾患マーカーとして使える可能性がある。
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